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第二話 任務の重さって多分日頃の行いじゃね?

 
「コムソンさ〜ん任務何なの?」

「任務に向かう人が気楽だね」


またソファーに寝転んでいる銀時にコムイは呆れる。

「気楽じゃないよ。とっても緊張してるよ」

「君の顔見てそう思う人はいないよ。さて」


キリッと真剣な顔になる。それに銀時は何の驚きも見せずコムイの話しを聞き始めた。


「二人には《雨の街》に行ってもらうよ」

「《雨の街》?まさか、雨が降り続けてるさ?」

「えっ!“飴”が降ってんの!?」

「銀さんは黙ってね。ラビが言った通り、雨が降り続けている街なんだ」


場所を差し早急に行ってほしいという。それに二人は応じた。





*****


「始めはどこから回ろうか。神楽ちゃんどこか行く場所ある?」


新八から始め率いる三人は一旦万事屋を出てスナックお登勢にいる。


「やっぱし始めは食べ物屋ネ。おかわりー」

「おい待て何一人飯食ってんだお前は」


おもくそご飯を食べている神楽に新八はツッコミかぶき町四天王の一人と呼ばれているお登勢にすみませんでしたと一言謝り神楽とアレンを連れてスナックを出ていった。


「飯食っといて何タダで出て行ってんだ貴様等ー!!」


 
その後は色々な場所を回って行った。


「どこか行く場所はあったかな・・・?」

「・・・ゲッ、サドとマヨラーがいるアル」


急に声を発した神楽。新八はその言葉を向けた方を見た。


「あっ、こんにちは土方さん沖田さん」

「ンッ?ああ万事屋か・・・死んだ魚の目をした奴はどうしたんだ今日は?」

「チャイナ娘。なにナンパしてるんでィ。大丈夫ですかィ少年?この女に犯されたり・・・」

「アレンになに吹き込んでんだお前ェーは!!いっぺん死んでこいヨ!」


新八に訪ねたタバコを吸っている黒髪の男、土方十四朗と神楽と喧嘩を勃発しようとする青年、沖田総悟。新撰組にいるお方達だ。


「初めまして・・・マヨラーさんとサドさん」


アレンはお辞儀よく沖田にマヨラーと、土方にはサドと申した。


「いや名前違うしマヨラーは土方さんでサドは沖田さんだから。えっとこちらはアレン・ウォーカーさんです」

「すみません、名前間違ってしまって」


土方にアレンは謝り土方は素っ気ない態度で「気にするな」と言った。


 
そんなことよりと土方は口を開き続ける。


「お前らに用があんだよ」

「依頼・・・ですか?珍しいですね」

「お前なら知ってるかと思ってよ。依頼ってんのは」


ポケットから何やら取り出しある写真を新八に見せた。


「ゴリラ?」


写真を一緒に見ていたアレンが発した一言。


「アレンさん違いますよ。これはゴリラじゃなくて近藤さん・・・彼らの大将。
立派なゴリラ・・・じゃなくてストーカー・・・でもない立派な人と思われる人だよ」

「おい待て!!いろいろと要らない単語使ってるよなお前!?」

「要らないってわけじゃないでしょ・・・一応事実じゃないですか。で、近藤さんがどうかしたんですか?」


やっと本題に入った。
土方はまだいがみ合う沖田と神楽を見ながら語りだした。


「ありゃ先週のことだ・・・」









































-

エピローグ

 
「・・・ド、起きてエド!!」

「うっ・・・!アレン!!」


女性の声を目覚ましの変わりに起き出したエド。
それに彼の名を叫んだ。



「あれ?ウィンリィ・・・どうして、ってか此処は!?」

水色の大きな目に、後頭部で結ばれた長い金髪がさらさらと背中で揺らいでいる少女ウィンリィ・ロックベルに顔を向ける。


「どうしてって、あんたらがこの街の近くに倒れ込んでたのをある“人”が運んでくれたのよ。御礼しようと思ったのにどこか行っちゃった。アルは今出掛けてるわ」


――・・・あれは夢だったのか?
今さっきのあのもう一つの世界は何だったのか。ふと、近くの机を見てみると銀バッチが置いてあった。


「それエドのでしょ?そこに名前刻まれてるから」


銀バッチを手に持ち見てみるとそこにエドの名が刻まれている。


『また会いましょう!エド』


エドはひそかに微笑み銀バッチを見ながら小さな声で発した。


「ああ、また会おう」


















































       END

第八話 適合者そして終焉

 
現れた女性の姿をした小熊。眼の色は先程通り紅蓮。


「お前・・・」

「汝が主だ。貴方次第で我は動く」


泉の景色よりも息を呑んでしまうその美貌。急に汝と言われても困る。そして何より、こんなイノセンス聞いてなどいなかった。


「エドーーッ!!そこから離れてください!!」


女性の姿を見ていたら突然アレンの声がした。その声にエドは自分の周りを見渡す。するとアクマがこちらに来ているではないか。


――どうする!?
掌を合わせ錬金術をし敵から避けようとしようとした。がそれを見透かしたのかアクマは攻撃を避ける。


――ヤバイ!
アクマの見下した笑い声が響く。そう思っていると女性の姿が目に映った。


「オイ小熊!!」

「『小熊』ではない」

「そんなのどうだっていいだろ!走っているこっちの身になれ!」

「汝が名前を付けてくれ」

「なっ!」


全力で逃げ惑うなかエドは女性の名前を考える。

――銀髪・・・に小熊。
特徴を活かし名前を付けようと思ったのかエドは頭に単語を並べそして思いついた。

 
「【シルバーベア】ってんのはどうだ!」

「嫌だ」

自信満々に答えたエドに女性は拒否した。


「そのままではないか。ネーミングセンスないな」

「うるせィ!!」


段々と息が乱れる。それに対し何故か女性はアクマにも襲われず、エドを眼で追い掛ける。

すると何か思い付いたのか女性は口を開いた。


「【シルバー】で構わん」

「は、はぁ?」

「早く我に指示しないと殺られるんじゃないのか」

「くっそ〜!人のネーミングセンスを馬鹿にしといて!んじゃシルバー!俺を早く助けろ!!」

「仰せのままに」


するとシルバーは高く跳びはねる。すると指先を揃えその爪からとてつもないくらい鋭い爪が現れた。

まだアクマに届いてもいないのに引っ掻く動作を行う。


「熊の爪《ベアクロー》」


小さく発した言葉と同時にアクマは爆発した。エドの方から見ると何が起きたかアクマに隠れて見えなかった。


 
「何が起きたんだ・・・?」


「ただ“刻んだ”だけだ」

「刻んだ・・・」


また爪を振るうと爪先から三日月の形をした光が素早くアクマの元に駆け巡り、言葉通り“刻んだ”。


「威力はまぁまぁだ」

「うん。俺にしたらスゲェー凶器」


顔を青ざめていると後ろから声がした。


「オイ、早くこの場から逃げろ」

「神田!」

「あの女もだ。どこから拾って来た」


いつの間にか逃げている間に泉を半周したらしい。元の場所に戻っていた。

神田がエドの方を掴み後ろに下がらしだがエドは逃げず神田の前を横切った。


「聞いてたか人の話し。適合者じゃないお前がきてもただの足手まといだ」

「足手まといじゃねぇーよ。先程適合者になりましたから、俺」

少し驚いた顔をした神田ににやける。
エドはシルバーの名を呼んだ。


「俺を負ぶさってくれ。指示を出すから」


それに無表情でエドを負ぶさった。


「主・・・小さい割に重いな」

「ちっさい言うな!!機械鎧二個ぶら下げりゃ重いは!ほらアイツの後ろ回って攻撃してくれ」

「逆に足手まといだな」

「口縫い付けていいか?」

 
多く居たアクマも次第に減っていく。アレンはアクマを攻撃している中エド達を発見した。


「あの女性は・・・?」


口論しあっているのかエドが暴れている。アレンはあの女性シルバーがイノセンスだと当然思わない。それにエド達の元に行ってしまった。


「エド!何やってるんですか!?」

「何って倒してんの」

「女性に負ぶさりながらですか」

「何引いてんだよ。誤解すんなよコイツはイノセンスだよ」


アレンはそんなわけないでしょと言う顔でエドを見つめる。それにしても人一人負ぶさりながらこんなにも走れる女性を不思議がる。


「俺だって驚いたけど本当何だって。なぁシルバー」

「ああ」


また爪を振るうとアクマが爆発した。アレンもこれを目にしたら信じるしか言いようがなかった。


「新たなイノセンス・・・」


「ワァーーーーッ!!!」


「!?クラル」


叫び声がした方を見ると残りのアクマに囲まれていた。


 
「クラルさん!!」


その場の近くに居たアルがクラルを助けに向かう。

掌を地につけ、クラルに円型の土を張り、盾になった。

だがその盾は直ぐにアクマに壊されるのがオチなのはわかっていた。だからアルは素早く一つだけだった盾に何十もの盾を錬成した。

それにアクマは諦めたのかクラルからアルに標的を変えた。

次々とアルの周りにやってくる。鎧だとしてもアクマの攻撃に当たれば一たまりもない。

自分にも盾を張ろうかと思ったがそれじゃあ外の様子がわからない。

アルはアクマに攻撃を向けられる。


「アルーー!!」


アクマの後ろからエドがこちらに向かって来るのが見えた。だが、アルの元にたどり着くまでアクマが攻撃をする時間がまだある。


 
「これじゃあ間に合わねぇ!シルバーもっと・・・もっと早く!!」


焦りから掌の中に汗が滲む。

――届かない。届かない!
たった一人の弟を失う。そんなこと想像などしたくもない。





    また護れない?





脳裏にその言葉が旋律する。自分の力の弱さのせいで誰かが死ぬ。自分の力にまだ“強い”と酔いしれているのは誰も“護れてない”から。


ゆっくりと時間が進む。アクマが笑う高い声が弟への“死”のカウントダウン―・・・。


「“護れない”んじゃない。主はただ“護らない”のではないのか?」


凜とした声が流れたと同時に周りの“時”が止まった。たがそのことには驚かないでシルバーの言葉に驚いたエドが居た。


「“護らない”・・・?俺がか」

「・・・主は何時もそうだ。何時も何時も“護らない”。主は何時もただの“傍観者”だ!!」


負ぶされていたエドをゆっくり下ろし叫ぶ。
声はエドの心に響く。
思い返せばそうだったかもしれない・・・いやそうだった。


シルバーから出て来る現実の言葉に耳を塞ぎそうになったがそれは彼女に塞がれた。


「“傍観者”は止めて主は“自身”に問え!!主は、主は何をしたい―・・・?」


虚ろな瞳が大きく開く。
――俺は何をしたい?
悪い方向ばかり考えるこの思考に問い質す。だが返ってくることはない。自身の心に説いてないからだ。
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第七話 紅蓮の眼を持つ者

 
日が昇って来たのと同時に閉じていた瞼を開いた。
アレンは大きなあくびをした。


「あれ?なんでまだ火がついてるんだ?」


ふと気付いた。確か昨日は火が消えていたはずと思いながら周りを見渡すとエドが着ていた服が干されている。

その服の持ち主を見てみると団服だけ羽織って安らかに眠っていた。


――何があったんだ・・・?
疑問を頭に浮かべながらエドともう一人の青年クラルを起こす。

先に起きたのはクラルだ。


「おはようございますアレンさん」

「おはようクラルさん」

「・・・エドはどうしたんです?」

「寝てますよ。昨日の夜何していたのか、服が干されています」


苦笑いを浮かべもう一度エドを起こした。





「ハクション!!さみ〜アレン服取ってくれ」


起きたエドは寒そうに身体を丸くした。


「服をビショビショにしたのかは知りませんが何したんですか?」

「んっ?ああ、そうだ聞きたいことがあったんだ。満月って何時出るか知ってるか?」


話しを反らし逆に問い掛けてきた。
 
エドに問い掛けられたがそう知識がないアレンはクラルに聞いた。


「満月なら今日ですよ。何かあるんですか?」

「今日かよ・・・。まさか本当にあの夢は・・・」

「夢?」


不思議そうに尋ねるとエドは困った顔をした。だが少し経ちエドは口を開いた。


「夢でよ。予言みたいなの聞いたんだよ」


一つ一つ話していく。
アレン達はエドの話しに考える。本当の話しなのか、はたまた偶然なのか・・・。


「不思議ですね・・・もしかしてそれ本当なんじゃないのかな?」

「わかんねぇ。だけど本当だとしたらさ・・・」


三人に沈黙が訪れる。
エドが言葉にしなかったのはもう彼に解っていたから・・・。


「とりあえずそれは夜のこと!さっさとイノセンスを探さねぇとな」


ニカッと白い歯を見せた次の瞬間、またもくしゃみをしたエド。それにアレンとクラルは笑った。

 
正午、アレン達が探し回っていると時間が過ぎ昼になった。一度食事を採ったあと、アル達と合流した。


「この森は把握したのか?」


早速この一言がでたのは神田だ。クラルは探索班としてそのことは動いているうちにほぼ把握できていた。

探索しているときに紙に地図を作っておいた。それを神田に渡す。


「探索したところは此処とそこです」


自分達が探した場所を指す。神田はそれを無言で聴き入る。


「ほぼこの森全体は探した筈だ。何か怪しかったとこはなかったのか」

「ええ、ありませんよ」


アレンは神田の問い掛けに答えるなか、エドはアルとあの夢の話をする。


「満月のこと聞いたの?」

「ああ。それがよ・・・今日らしいんだ」

「今日!?」


大声を出したアルの方にアレン達が振り向く。


「今日って、あの話しですか?」

「はい」

「ならイノセンスを今日までに見つけ出さないといけませんね」

――今日まで・・・にか。
空を見上げたエド。そこにはまだまばゆい太陽がを地を照らしていた。


 
「イノセンスって何かに護られてるってのもあるのか?」


見上げていた空から頭を下げ問う。アレンは「確か・・・」と呟き、一瞬暗い表情を浮かべたものの続けた。

「護るというのはありますが・・・イノセンスは人間に発見されて色んな姿形になって存在していることが多いんです」


――マテールの亡霊・・・。
いつか前に起きた任務。ララと言う名の人形とグゾルと言う名の人間。


『誰かを救える破壊者になりたいです』


神田に放った言葉。神田に『救済者』じゃなく『破壊者』だと言われて頷いたがララの一言で変わった。

――あの日の出来事は忘れない。
団服のローズクロスを握り絞めた。


「じゃあ、イノセンスが違う形である可能性が高いんじゃ・・・?」


首を傾げアルは聞く。それに対し神田が答えた。


「その可能性は高いが、人間がイノセンスをこの砂漠で見付けたという可能性は低い」

「ああそうか」


今は森だがもとは砂漠だったこの場所でイノセンスを見付けるのは偶然に等しい。

イノセンスが何処にあるのか皆頭を抱え込む。


*****


「ってかもう満月出ちゃったけど!!」


あのまんまイノセンスが何処にあるかうろついたりしていたらあっという間に夜。

それにあわてふためく。

――イノセンスはどこだ・・・!
焦りが襲ってくるのと同時に頭から一瞬声が聞こえた。


【 泉 】


「そういえば泉・・・」


ハッと気付く。昨日唯一水が存在した場所。
それにアルも気付く。


「泉の中にイノセンスがあるんじゃないか!?」

「泉なんであったんですか!?」

「ああ。確か此処から行って・・・」


二人が昨日いた場所を目指し始めた。

泉に着くとやはり溜息がでる程綺麗な泉があった。昨日と違うとすれば泉に映る月の形とあの小熊が居た事だ。


「あの時の・・・」


小熊に近付いて行くとある変化に気付いた。小熊はこちらを振り向く。

【ようやく 来たか】

「!?」


一度辺りを見渡したもの声を発した者はいない。その行動にアレンが「どうしました?」と尋ねた。


――聞こえなかったのか今の声を・・・?
疑問に思っていると逆に小熊はエドに近付いてきた。

 
【汝 聞こえる 我 声】

――!?コイツが・・・。
小熊の紅蓮色の瞳を見つめる。始めに会ったときはこんな眼をしてはいなかった筈。


【イノセンス 我 身体 ある】

「何!?」


声が森に大きく響いた。この声に何事かと思いアル達はエド近付く。


「どうしたの兄さん。さっきから可笑しいよ」

――やっぱり聞こえないのか。
小熊の声が聞こえる自分の行動に不安げに思う。エドは小熊をちらっと見てアル達に伝える。


「イノセンスは・・・この小熊の身体の中にあるらしい」

「ハッ!?何でそんなことが解るの?」


そんな討論をしていると小熊は泉の中に潜って行く。それに気付きエドは小熊に叫んだ。


「何やってんだバカッ!?」


エドの様にまた泉に入って行く小熊。それとエド。

――キュィィーン
その時、アレンの右眼が反応した。


「エド泉にアクマが!!」

「えっ?」


瞬間だ。小熊の後ろの泉から渋きが発った。
現れたのはレベル2のアクマ達だった。
 
――何故気付かなかった・・・いや、反応しなかったんだ!?
不思議に思っている場合じゃないとアレンはイノセンスを発動させる。神田も構える。


アクマの数はザッとみ十数体。昨日からさっきまで居なかったアクマが急に現れる。小熊があの紅蓮の眼を我々に見せるまで――・・・。


「アクマ・・・!!」


エドはイノセンスを持ってないただの“人”。アクマが現れ少し驚くが直ぐに小熊の場所に突っ込んで行く。


「兄さん!!!」


その行動にアルは驚きエドの場所まで自分までも向かおうとした。
その時誰かに堅い鎧の身体を掴まれた。


「バカかテメェーは!人じゃないその身体でもアクマの攻撃を受けたら木っ端みじんだッ!!!死ぬ気か」

「神田・・・さん」


何時もより恐い顔の神田が怒鳴った。

「錬金術で俺達を援護につけ“アル”」

「・・・わ、わかりました!兄さんをお願いします!!」


その返事を聞いた神田は直ぐアクマの元に突っ込んで行った。

一瞬、こちらをみて少し笑った気がしたのは気のせいだろうか。


 
「ヤロウッ!!」



アクマの攻撃を避け小熊を持ち上げる。一端泉から離れたもののアレン達とは逆の陸に着いてしまった。


「昨日乾かしたってんのに!なんなんだあのアクマ!?」


小熊を下ろし重たくなった団服をほうり投げる。

アレン達に向かったアクマを見て不思議に思う。始めに遭遇したアクマとは全然違うからだ。


――まさか、進化したアクマか!
コムイから聞かされていたアクマの知識を思い出す。

レベル1とは違ってアレン達はてこずる。クラルは探索班としてサポートをする。


――何も出来ないのか・・・俺は。
そんな光景をみて悔しくなっていく。小熊をふと見つめるとエドはあることが頭に浮かんだ。


――コイツのイノセンスは俺には使えないのか・・・?
適合者ではなければ発動出来ないイノセンス。他の人には聞こえなかった小熊の声・・・自分には聞こえるということは何か細工がある筈と思い、小熊に問い掛ける。


「お前のイノセンスは・・・俺に使えないのか・・・?」

【・・・お前は何を護りたいんだ?】


さっきとは違う口調で逆に問われた。紅蓮の眼をこちらに向けながら。


 
「護りたいもの・・・」

紅蓮の眼を見つめる。
問われた言葉に少し戸惑ったが答えはでてた。





「“皆を護りたい!!”」




もう前から思っていた事だ。自分達の性で他の人達が傷付くのは散々だった。

声をはらして言ったその言葉を小熊は聞きとめた。

突然小熊の身体を光り輝く。それにエドは小熊を見つめるものの、輝きが強過ぎてどうなったのか解らない。


――前の時と一緒な輝き・・・!?
この世界に来る前にうけたあの輝きにとても似ている。そんなことを思っていたら小熊から光が薄まっていく。


「汝の“気持ち”与った」


小熊から光が失くなった後の姿・・・それは人間の姿をした銀髪のさらさらなロングをした綺麗な女性の姿だった。

第六話 プスタ神の居住地エジプト

 
「暑い〜!!」


エジプトにつき砂漠の上をひたすら歩いていた。


「やめてくださいよ・・・そんなこと言ってるともっと暑くなる」

「るせー。俺は機械鎧《オートメイル》右腕左足と二つも鋼の手足ぶら下がってんだから・・・前にもシンに行く時あったぞ」


あちーと連呼し続けるエド。羨ましそうに前に進んでいるアルと神田を見つめる。


「神田汗ひとつかかねぇーってバケモンか・・・?」

「知りませんよ・・・。コムイさんの話は確か森だらけなんじゃない・・・」

「二人共!!あっちに森が見える・・・」

「!?」


アルのその言葉で二人は急な砂漠を駆け登る。


「本当だ・・・」

「・・・すげぇ、イノセンスって凄いんだな!!」


この光景に錬金術オタクが発動する。錬金術で等価交換しなくてはいけない筈だがイノセンスはその等価交換もなにもせず砂漠に木が生えているからだ。


「オイお前ら、さっさとこい。そこでのろのろしてんじゃねぇー!」


アルよりも少し離れた所に神田は居た。一人でさっさと進んでいく。


「ようやく着いた」

「森だらけだ」


自分達の後ろを振り返って見てみると砂砂砂だらけの砂漠。前を向くと木木木だらけの森だ。


「じゃあ始めは探索班と合流しましょう」


そのあと、ゴーレムで通信を取り合流した。探索班は一人だった。まだ若い青年。


「初めましてエクソシスト様。僕の名前はクラル・ルーボーソンです」

「よろしくお願いします。クラルさん」

「この森に何が起きているんだ?」


アレンは挨拶をしたが神田は挨拶もなしで任務に取り掛かる。

クラルは黒の教団で神田の性格は噂に聞いていたので直ぐさま状況説明しだした。


「現在の状況は多分イノセンスの力によって、森ができ、その中に生物が住むようになったと、他の一般人がこの森に興味本位に入って目撃したという者があります。その中にもその生物の被害に遭った方もいると」

「大体は把握した。早くイノセンスを探しに行くぞ。“ヤツら”が感づく」


そう言い残し一人で森の中に進んでいく。

神田が残した言葉“ヤツら”は千年伯爵のこと。千年伯爵に見つかる前に探し当てないとイノセンスが破壊されてしまう。


「兄さん、僕神田についていくね。一人じゃ危ないだろうから」

アルも続いて神田の所に向かう。少し後から「足手まといになるなよ」と神田の声が聞こえた。
 
残っているのは三人。とりあえずどうするか決めることにした。


「神田の言う通り、早くイノセンスを見付けないと大変ですね」

「ああ、どうする?俺達三人バラバラでイノセンスを探すか?」

「いえ、それは危ないでしょうから三人で行動しましょう」

「わかった。アンタもそれでいいか?」

「はい」


三人は神田達と反対の方に進む。進んでいくとあらゆる生物に出くわした。


「まるでジャングルだ。これほどまでにどうやって生物が生まれたんだ・・・」


進む中エドはイノセンスの素晴らしさに感嘆する。すると一匹の可愛い小熊が現れた。


「熊までいんのかこの森は」


手を出し頭を撫でる。何故かアレン達が来ないので呼び掛ける。


「何で触んねぇーんだ?」

「・・・エド、前」


顔を真っ青に染めアレンとクラルは指差す。エドはその方向に顔を向けた。すると茶色い毛に当たった。


 
ぼふっ。
エドが当たったモノから柔らかい効果音が鳴る。

まさかまさかと、エドは上を見上げる。するとそこにはニヤリとした表情の熊が聳え立っていた。


「ギャァアアア!!」


声が森から響き渡り鳥達が逃げて行く。三人はそれと同時に必死に逃げる。


「何で二人共教えてくれねぇんだ!!」

「教えましたよ!」

「エドワードさんが気付かずに小熊触り続けているんですもの」


後ろをいったん振り返りながら走る。まだ熊は追いかけてくる。


「あの熊俺らを食べるつもりだ!絶対!!」

「よだれ垂れ流し続けているんですけど!?」

「・・・仕方ねぇ。アレン協力してアイツ捕まえるぞ」

「!? わかりました。クラルさんは物影に隠れて」

「あっ、はい」


クラルが隠れたのを確認すると二人は熊に向かい会った。


「アレン!俺が熊の動きを止めるからお前は熊を気絶させてくれ」

「はい!」


エドは錬成した手の形をした木を熊に取り巻きつける。

熊は動きを取れず爪で木を刻み付ける。

アレンはその間に熊の頭を脚で打ち付けた。力がとてつもないくらい強かったのか、一回で気絶した。
 
どさりと大きな音が地面に鳴り響く。熊はすっかり気絶してしまい、エド達はそれを確認し一安心する。


「クラル・・・出て来て平気だぞ」


クラルはその言葉通りゆっくりと物影から出てきた。


「凄いですね・・・こんな大きな熊を」

「こんくらいの奴倒せなきゃダメだからな」


熊をまじまじと見つめる。エドは熊を指差しアレンに問いただす。


「どうするこの熊。ここにおいてたら邪魔だし・・・喰っちまうか?」

「この熊をですか!?」


驚きのエドの質問にアレンは叫んだ。エドがまだ幼かった頃に、師匠に森での修行で熊等の動物を食べるのは当然。

同情はしてられない。

アレンは考え混む、熊を殺してしまうのに抵抗があるのか倒れ続ける熊を凝視する。

するとだ、一匹の小熊がやってきた。


「コイツ、さっきの小熊か」


エドが近付こうとしたら小熊はエドに見向きをせず、もう一匹の熊のところにゆっくりと近づいていった。


「・・・コイツ、まさかこの小熊の母熊か」

「そうなんじゃないんですか」


二匹の光景を三人は見続ける。エドが急に小熊達と反対の方角に動き出した。 
一人歩み進むエドをアレンは止める。


「エド、いいんですか・・・?」

「小熊見て気分変わった」


さらっと一言言い放ちまた進み出す。エドが母親が死んでその後の自分をあの小熊に写しているのだろう。

アレンはクスッと笑いを零した。クラルとアレンがエドを追い掛ける。

その後ろにまだ起きぬ母熊を待つ小熊の眼が朱く染まる。その眼でエド達を見つめ続けていた・・・――。





*****

「全然見つけらんねぇー」


嘆いているエド。他の二人は仕方ないとエドに声をかける。


「神田達のほうも見つけられてないそうですよ」


ゴーレムから通信をしていたのか、残念そうに答える。

クラルは一人火をおこそうと必死にライターで点けようとしていた。


「ん?火がでねぇーのか?」

「あっ、はい。ライターが火鉢を出さなくて困っているんですよ」

「・・・板と木の棒ないか?」

「板と木の棒ですか?ありますがどうするんですか?」


見てろとエドはクラルに言うと、クラルから渡された板と木の棒で火を起こそうとした。するとだ、数秒後に煙が立ち火が燃え上がった。

 
「エドワードさんって何でも出来るんですね」


尊敬の眼差しを向ける。エドはそれに「そんなことはねぇ」と答えた。


「いや凄いですよ!エドワードさんこんな若いのにいろいろと・・・」

「若いって言ったらお前もだろ。それにさん付けは止めてくれよ。俺より歳が上のお兄さん何だから」

「・・・わかりました。これからは『エド』と呼ばしてもらいます。よろしくお願いしますエド」


エドはクラルが差し出した手を握りしめた。照れ臭そうにニコリと微笑んだ二人だ。


「それとさ・・・俺は何もできねぇーよ。本当に・・・――」


哀しい表情でクラルに答えたエドにクラルは驚く。
15の少年が出すその表情・・・世界は子供の心に何を仕組んだのか、とても恐ろしいと思わされた。





夜、アレン達は当然宿屋もない為野宿した。焚火が要約消えた頃だ。一人ゆっくりと夢から目覚めた。


――何なんだ。あの夢は。
昨日もみた夢がまた現れた。二日同じ物が続くと奇妙に思えてくる。


「満月っていやぁ・・・“明日”か」


視線を夜空に向ける。真っ暗な空に点々と星があり、南の空の上にもうすぐで満月になりそうな月があった。


――今は零時か。
月の動きを確認しながら元居た場所から離れていく、すると大きな泉が現れた。


「綺麗だ・・・」


一言発した言葉はこれだった。月が泉に写されている。エドはその泉の中に入って行き、写しだされている月に触れた。勿論、感触は透明な水だ。


「世界はほんと、広いな。
『全は一、一は俺』・・・笑っちまうな」


バシャンと身体を泉に浮かばせる。瞼をゆっくりと閉じた。


「兄さん・・・?」


鎧の中で跳ね返る高い声が響いた。エドは声がした方を直ぐに振り返った。


「アル・・・!」
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