女王は誰にも優しい
誰もに愛される存在
そんな女王に彼は恋をした
だが女王はそんな思いを知らない
今日も優しく国民に微笑みかける
一人一人に向けられる笑顔が彼を苦しめていく
貴女は私を見てくれない
貴女は皆へ笑いかける
純粋過ぎた思い
過剰なまでの欲
貴女は誰にも優しい
貴女は私の思いに気付かない
貴女は私に笑いかける
貴女は私の思いに気付かない
貴女はそのまま過ぎていく
女王相手の狂う恋
加速していく思い
貴女が女王である限り、私の思いは届かない
貴女が女王である限り、私のモノにはならない
普通の人間のように告白出来たら楽になれるだろう
だが彼女は皆のモノ
決して誰のモノにはならない
彼女は「女王」
男は気付いた
「ならば貴女から女王を奪おう」
小さな火はやがて大きな戦火となった
男が叫んだそれらしい大義名分は勝手に誰かの脳内で変換されて意味をもつ
誰も自分の意図には気付かないと男は戦場で高笑い
部下達は勝手に心打たれてついてきた
彼女が笑いかけた国民は斬り捨てた
彼女が好きだった街は燃やした
彼女を守ろうとした兵士達は皆殺してやった
彼女が守ろうとしたもの全てを殺した
ついに王宮は陥落し
国民全ていなくなった
甲冑に身を包み剣を手にした最後の女王
玉座に座り彼を見た
「何故こんな事を」
女王は聞いた
「貴女が欲しい」
男は答えた
女王は笑う
「私は皆のモノ。誰かのモノにはなれはしない。例え国を滅ぼし民を滅ぼしたとしても私は貴方のモノにはなりはしない」
女王は怒る
「貴方は私の大切なモノを奪った。私は貴方を許さない」
男は笑う
「貴方は今私を憎んでいる。やっと私を思ってくれたな」
男は笑いながら、剣を振るった
玉座に座る男
右手には愛しいあの人の首
彼女はもう誰も見ない
彼女はもう誰にも微笑まない
彼女はもう誰にも触れない
彼女はもう誰も思わない
彼女はもう私しか見ない
愛しい人を男は永遠に手にいれた
2011-11-23 19:55