一寸呪われちゃって、反社から浮気してました。
リハビリがてらに、季節もののssです。
「ベストタイミングじゃん!」
少しだけ先を歩く竜胆が、大きく伸びをしながら兄姉を振り返った。
「だなぁ。」
「えぇ、本当にね。」
二人は、朗らかに笑う弟に笑い返す。
姉弟三人は、陽春の中、桜が並んだ公園内を歩いていた。空気はふわりと暖かく、仄かな桜色の向こうには、青空が広がっている。正に春爛漫という日和。
仕事の合間に少し時間が出来たので、折角なら姉に日本の桜を見せようということになった次第だ。
桜吹雪とまではいかないものの、時折ふわりと花片が舞い降りてくる。
「姉ちゃん、どう?」
「とっても綺麗。流石、日本ね。」
「つっても、姉さん。あっちでも桜見られたんでしょ。」
「そうね、何か所か有名なところはあるから。でも、毎年見に行っていたわけでもないし、こうして桜の下を歩くのは随分久し振りよ。」
姉の微笑みに、弟は満足そうに笑む。
一陣の風が吹き、桜の花片は多く舞った。
「うわっ、口入った。」
「竜胆、ダセェ。」
「あら、竜胆。」
「何、姉ちゃん。」
ゆっくり歩み寄った姉が、末弟の頭部に手を伸ばした。
何時もの流れで、竜胆は素直に頭を下げる。
「髪にも付いてるわ。」
姉が軽く払うと、はらはらと薄ピンクが落ちる。
「姉ちゃん、ありがと!」
「綺麗な髪の色だから、桜の花弁が良く映えるわね。払っちゃうのが勿体無い位。」
「そっかな。」
「…ん?どうしたの、蘭。」
自身の服を軽く引っ張る長弟を見上げる。
「姉さん、姉さん。蘭ちゃんの髪にはくっついてない?背ぇ高いから判んなくってえ。」
「今、背の高さ関係なくない?兄ちゃん。」
謎の高身長アピールに、竜胆は口を尖らす。
「蘭、少し屈んてくれる?」
「はぁい。」
ご丁寧に、膝に手をついて腰を屈めた蘭の頭部を、姉は優しくさらう。
「蘭は大丈夫そうよ。」
「ありがと
姉さん。」
ニコニコと姿勢を戻す蘭に、小さく舌打ちしてから、竜胆は姉の手を取った。
「姉ちゃん。そろそろ兄ちゃんと交代して、今度は俺と歩こ!」
「仕方ねぇな、甘えん坊竜胆。」
「兄ちゃん、五月蝿い!」
「…いい?蘭。」
「いーよ、可愛い弟のワガママ位叶えちゃう。蘭ちゃん優しー。」
「えぇ、蘭はいつも優しいわ。有難う。」
「でしょ
。」
「いや、いつもじゃなくね?」
また風が吹く。花片が舞う。
「風が強くなってくるのかしら。」
揺れる髪を抑える姉に、弟二人は微笑んだ。
「姉さん。」
「姉ちゃん。」
「何?蘭、竜胆。」
蘭と竜胆は、姉の頭髪に静かに手を伸ばす。
「今度は姉ちゃんに付いてる。可愛い。」
「桜の妖精さんみたいだよ、姉さん。」
花片を摘んでみせる弟に、姉は苦笑を零した。