なぜ、安倍政権はデフレ下であるにもかかわらず緊縮財政を推進しているのだろうか。理由はデフレの『原因』ついて正しく理解していないため、としか考えられない。 デフレについて『総需要の不足』ではなく『貨幣現象』と表現する人がいる。例えば、政府の産業競争力会議の『民間議員』の一人であり、人材派遣大手パソナの取締役会長である竹中平蔵氏は、2013年7月3日の『IT Japan 2013』の講演で『デフレの原因は人口減少でも需給ギャップでもなく、マネーの量が少ないということ』 と、語っている。需給ギャップ、つまりは『総需要の不足』がデフレの原因ではないと断言してしまっているわけだ(人口減少がデフレの原因ではないという点については、同意するが)。 また、安倍政権の内閣官房参与である浜田宏一イエール大学名誉教授は、デフレについて『貨幣的現象』と呼んでいる。 政府のブレーンたちに影響を受けたのか、13年2月7日の衆議院予算委員会で、安倍総理大臣までもが、『デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる』 と、答弁した。
(中略)
総需要の定義は、明々白々だ。すなわち、名目GDPである。より具体的に書くと、『民間最終消費支出』『民間住宅』『民間企業設備』『政府最終消費支出』『公的固定資本形成』『在庫変動』そして『純輸出』の合計金額こそが、名目GDPであり、総需要なのである。(中略)それに対し、『貨幣』とは極めて曖昧な表現だ。少なくとも、貨幣には三つの定義が存在している。三つの定義とは、以下になる。
(1)政府・中央銀行が発行する現金紙幣、硬貨、日銀当座預金残高の合計。いわゆる『マネタリーベース』
(2)銀行に供給されたマネタリーベースが借り入れられ、消費や投資などに使われ、再び銀行に『預金』としてお金が貸し付けられるという、『信用創造(お金の貸し借り)』のプロセスを経て拡大する社会全体のお金の量。すなわち『マネーストック』
(3)実際にモノやサービスの購入のために使われたお金の量。すなわち『名目GDP』(中略)
『デフレは貨幣現象』と主張する人の多くは、貨幣の定義を明らかにしない。これは、極めて問題がある態度だ。 インフレにせよデフレにせよ、物価の変動とは、『国民が生産者として生産した、モノやサービスという付加価値の値段が変わること』を意味する。そもそもの定義として、インフレ・デフレとは『モノやサービスの価格の変動』のことなのである。モノやサービスとは、つまりは名目GDPのことだ。(中略)重要なので繰り返す。インフレ率上昇とは、生産者が働いて生産した『付加価値』の価格が上がることだ。デフレーションとは、生産者が働いて生産した『付加価値』の価格が継続的に下がっていくことなのである。すなわち、モノやサービスといった付加価値以外の価値が上昇しようが、下降しようが、インフレ・デフレとは何の関係もないことになる。

続きはまたいずれ(^_^)/~~