関岡:(前略)実は、南米では1980〜1990年代にかけて、水道が民営化されたことがあります。たとえばアルゼンチンでは、水道事業を民営化して外資の参入を認めました。
すると、アズリスクというエンロンの子会社が参入してきて、ブエノスアイレス州の水道事業を任されました。同社が即座に実施したのは、水道料金の値上げです。そのうえで払わない場合は水道の供給を止めると通告したのです。
さすがにアルゼンチン政府が介入し、値上げを禁止したのですが、驚くべき事にアズリスクは米国・アルゼンチン二国間FTAのISDS条項を発動し、アルゼンチン政府を国際仲裁所に訴えたのです。
おそらく、『民にできることは民にやらせると言うから、わざわざアルゼンチンまで進出してきたし、料金をいくらに設定するのかは民間企業の勝手なのだから、それに政府が介入するのは協定違反だ』というのが米国企業の言い分なのでしょう。非常に身勝手な話ですが、アルゼンチン側が敗訴し、1億6500万ドルの賠償金を支払う羽目になりました。水道事業を民営化し、
米国企業に参入を認めるとどうなるか?これは現実に海外で起こったことです。
三橋:他に私が認識している範疇では、フィリピンも水道を民営化してフランスの資本が入ってきましたね。もっとも、当時のフィリピンの水道インフラはまったく不整備で、水道管が届いていない地域も数多く存在しました。そこで、外資の力にすがったわけですが、フタを開けてみたら、設備不足に対してはほとんど手を打たなかったうえに、アジア通貨危機が発生してフィリピンペソが暴落したことを受け、いきなり値上げを実施する始末。結局、フィリピンの水道は国営に戻りましたが、えてしてそういった事態になりかねないのです。


続きはまたいずれ(-_-)/~~~