続・徒然なるままに
なぜ戦闘機が旅客機の隣に?拡大する自衛隊の“民間空港”利用 | NHK | WEB特集 | 防衛省・自衛隊
2024/03/28 20:30
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なぜ戦闘機が旅客機の隣に?拡大する自衛隊の“民間空港”利用 | NHK | WEB特集 | 防衛省・自衛隊

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231201/k10014272531000.html


 

 

「見慣れない光景で、ものものしいなと思いました」

そう話す女性の目線の先には、戦闘機の姿があった。

場所は大分空港。民間機が主に利用する“民間空港”だ。

11月中旬、ここに航空自衛隊の戦闘機が初めて着陸した。

今、自衛隊が、全国の“民間空港”を利用する動きが広がっている。

背景に何があるのか。現場を取材した。
(社会部記者 須田唯嗣・山崎啓 沖縄放送局記者 喜多祐介)

自衛隊が“民間空港”利用 そのわけは?

大分県の国東半島。

瀬戸内海に面した半島の東側に大分空港はある。

羽田や大阪、名古屋を結ぶ便など、一日およそ50便の旅客機が発着する大分県の空の玄関口だ。

11月13日午後1時すぎ。

羽田から向かってきた全日空の機体が滑走路に着陸した。
大分空港(11月13日)
そのおよそ10分後。

今度は青い迷彩の塗装をした航空自衛隊のF2戦闘機4機が、相次いで着陸した。

4機は駐機スポットに移動し、旅客機と同じ燃料を給油。

午後3時すぎに、ごう音を響かせながら空港を離陸した。
大分空港が52年前の昭和46年に今の場所に開設されて以降、戦闘機が着陸したのは初めてのことだ。

空港の展望デッキや近くの公園にいた人たちからは、驚きの声が聞かれた。
20代女性
「4機も戦闘機が来て、民間機と音も違ってびっくりしました。見慣れない光景なのでものものしいなと思いました」
70代女性
「戦闘機が来ることは知らなかったです。初めて見たけど、戦闘機って小さいんですね。ここに自衛隊の基地ができるんですか?」

ほかの“民間空港”でも戦闘機が

11月、航空自衛隊の戦闘機が着陸した“民間空港”はほかにもある。
徳之島空港(11月13日)
鹿児島県の徳之島空港では、大分空港と同じ13日、F15戦闘機4機が飛来。

滑走路に着陸したあとすぐに離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を行った。
岡山空港(11月15日)
15日には岡山空港で、F2戦闘機4機が離着陸。

17日には鹿児島県の奄美空港で、F15戦闘機4機が「タッチ・アンド・ゴー」を行った。

わずか5日間で4つの空港に戦闘機が飛来してきたのだ。

戦闘機がなぜ民間空港に?

目的は何なのか。

防衛省は11月、日本の防衛を想定した2年に1度の大規模演習を行っていた。

この中で、自衛隊の基地が攻撃を受けて使えなくなったことを想定した訓練も行った。
滑走路復旧訓練(那覇基地)
このうち航空自衛隊 那覇基地では、ミサイルや爆弾で攻撃を受けるなどして滑走路の一部が被害を受けた事態を想定し、穴にコンクリートを流し込んで復旧させる訓練を実施。

それと同時に今回、4つの“民間空港”で戦闘機の離着陸訓練を行ったという。
現在、自衛隊の戦闘機は、全国7つの基地に配備されている。

内訳は、北海道と青森、茨城、石川、福岡、宮崎、沖縄の7道県だ。

一方、国内にある空港は、自衛隊が共同使用している“共用空港”も含めておよそ100。

このうち、戦闘機が安全に離着陸できる長さ2000メートル以上の滑走路を持つ“民間空港”は、今回訓練が行われたところを含めておよそ60ある。

北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返し、中国が軍事力の増強を進める中、今回の訓練からは、使える空港を1つでも増やしたいというねらいが透けて見える。

住民からは懸念の声も

防衛省によると、今回、大分空港や岡山空港で訓練を行ったのは、関係自治体の理解が得られたためとしていて、ほかの空港についても理解が得られれば訓練を行いたいとしている。

一方で、地域住民からは懸念の声もあがっている。
大分空港で訓練が行われた13日、空港近くの公園では集会が開かれ、参加者たちが「大分空港の軍事利用反対」などといったボードを掲げて、シュプレヒコールをあげていた。
60代女性
「民間空港に戦闘機が来るなんて怖い。突然のことなのでやめてほしいと思った。こういうことが日常的になったらとんでもない」

政府文書に“民間空港”利用の方針

自衛隊による“民間空港”の利用の動き。

実は1年前、政府はこうした方針を掲げていた。
「国家防衛戦略」
それが去年12月に閣議決定した「安全保障関連3文書」だ。

日本への侵攻に対処するため、既存の空港や港湾を自衛隊が訓練で「利用」すると明記している。
これを根拠に、“民間空港”で自衛隊が訓練を行っていたのだ。

空港・港湾の整備方針も

文書の中ではさらに別の方針も示されていた。
空港や港湾の「整備」や「機能強化」だ。

政府関係者によると、自衛隊や海上保安庁が有事の際に活用できるよう、11月中旬時点で、沖縄や九州、四国を中心に10道県のおよそ40の空港と港湾を「整備」や「機能強化」の候補地として、地元自治体との調整を進めているという。

その具体的な動きが出ているのが台湾に最も近い沖縄県、与那国島だ。

取材班は10月、安全保障などで中心的な役割を担う内閣官房の国家安全保障局や防衛省の職員など関係者10人余りが与那国町役場を訪れたのを確認した。
与那国町役場(10月)
町によると、町長と会談し、今後の空港や港の整備のあり方をめぐって初めて協議したという。

いったいどのような空港や港の整備が検討されようとしているのか。

与那国町が政府・与党への要望のために作成した資料の中に壮大な構想が記されていた。
空港の拡張計画(与那国町の資料より)
島の北側にある与那国空港は滑走路を500メートル延長し、2500メートルに。
港湾の新設計画(与那国町の資料より)
島の南側では、砂浜や湿原がある場所に、幅およそ200から300メートル、奥行き1キロほどの大型の港湾施設を新たに造るという案だ。

与那国町は、有事の際に住民を避難させる移動手段の強化や、地域の活性化などのためにこれらの整備が必要だとしている。

10月の協議で町側がこの案を説明したのに対し、国の担当者は、空港や港は自衛隊の使用を想定しているものの、民間利用を含めたものとして検討を進めていきたいと説明したという。
与那国町 糸数健一町長
与那国町 糸数健一町長
「空港や港は民間としての利用が主体じゃないと困る。島の若い子どもたちにしっかり残るインフラ整備をするべきで、自衛隊一色の島になるのは困るということを強く申し上げた」

島に住む住民は

国と自治体の間で進められる協議。

一方で住民からは、十分な説明がないまま検討が進められているとして、不安の声が上がっている。
与那国島で港湾施設の新設が取り沙汰されている比川地区に住む陶芸家の山口和昭さん(75)は、40年以上この地区に暮らしながら創作活動に打ち込んできた。
沿岸監視部隊(与那国島 2016年)
島では7年前に陸上自衛隊の沿岸監視部隊が初めて配備された。

さらに今後、ミサイル部隊などが追加で配備されることが去年、決まった。

山口さんは、自衛隊の部隊の配備が始まってからの島の変化に戸惑いを感じている。
山口和昭さん
山口和昭さん
「いろんな状況があるから今の監視する部隊はいてもいいと思うが、どんどん島が“基地化”されていく。ミサイル部隊が来てさらに大きな港まで造ろうとしているなんて」
港湾施設が取り沙汰されている場所は、山口さんも趣味の笛を吹くため時折訪れている。
自然豊かな環境が変わることは受け入れ難く、国や町は情報を開示し、住民どうしで話し合う機会を増やしていくべきだと感じている。
山口和昭さん
「ここに大きな港ができると想像すればそれはすごいことで、ことばが出ません。小さな島で賛成・反対でいがみあって分断されていくのは本当にまずい。島の中で今、自衛隊の問題を話す場がほとんどないことも問題ではないか。だいたいのことが住民が知らないところで決定されていき、この先もどうなるのか不安です」

“リスク含めて住民に説明を”

有事に備え、自衛隊による“民間空港”の利用や港湾の整備を進めようとする動き。
専門家は、政府や防衛省としては、こうした動きは当然のものと考えているとしたうえで、次のように指摘している。
東京工業大学 川名晋史教授
国際政治や安全保障論が専門 東京工業大学 川名晋史教授
「国際法上、民間の施設を攻撃してはいけないことにはなっているので、即座に民間空港が攻撃の対象になるということではない。しかし自衛隊機が一時的、あるいは一定程度駐留するということになると、民間の施設ではなく軍事施設だと相手に認識され、攻撃の対象に含まれる可能性がある。政府として自治体に対して説明を行うのは当然のことだが、重要なのはやはり住民への説明だ。訓練が一体何を想定しているのか、住民の日常生活にどのような影響が出ることを想定しているのかについて、丁寧に説明しないといけない」

広がる“方針に基づいた動き” 何をもたらすのか

安全保障環境が厳しさを増しているとして、防衛力の抜本的な強化をうたった「安全保障関連3文書」の閣議決定からまもなく1年。

現場ではその方針に基づいた動きが広がり、住民生活にも影響が出始めている。

決定されたものはほかにも、防衛費の増額や、弾薬庫の整備、反撃能力の保有など広範に及ぶ。

これらが何をもたらすのか、伝えていく。
(11月15日「ニュースウオッチ9」で放送)










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