大阪・阿倍野区視覚障害者福祉協会 声のおたより
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2022/09/08 10:08
角膜に傷がつく!? ハンディー扇風機の使い方にご用心

角膜に傷がつく!? ハンディー扇風機の使い方にご用心

強い日差しの中、飲み物や小型扇風機を手に持って歩く人の姿が多く見られた=大阪市中
央区で2022年6月29日午後3時24分、北村隆夫撮影
 連日の猛暑で、今や夏の定番グッズになったハンディー扇風機。その風を顔に当てると
心地がいいが、使い方には注意が必要だ。ハンディータイプに限らず、扇風機やエアコン
の風が目に直接当たると、目を守っている涙が蒸発し、角膜(黒目)に傷がつくリスクが
高まってしまう。さらに、涙で保護されなくなった目が夏場の強い紫外線を浴び続けると
、角膜が炎症を起こし、さまざまな眼疾患の原因になるという。風が目にもたらす影響と
、猛暑下での適切なアイケアについて、眼科医で伊藤医院(さいたま市見沼区)副院長の
有田玲子さんに聞いた。

目にとって過酷な状況に

 ハンディー扇風機の風が目に当たると、角膜にどんな影響があるのか。有田さんが啓発
団体「現代人の角膜ケア研究室」と共同で実施した実験で、風を受けてから1〜2秒で涙が
蒸発し始め、角膜がむき出しの状態になることが分かった。

 実験に参加したのは、日常的に裸眼で生活し、ドライアイ症状のない30〜40代の女性3
人。顔から20cmほど離した位置にハンディー扇風機を固定して1分間、風を浴び、実験の
前と後で涙液層破壊時間(BUT)を測定した。風を浴びている間、まばたきはいつも通り
行った。


ハンディー扇風機による実験の様子=現代人の角膜ケア研究室提供
 BUTとは、目の表面の涙がどのくらいの時間で乾燥し始めるかを調べ、涙の安定性を測
る検査。測定値が5秒未満で不快感などの自覚症状がある場合、ドライアイと診断される


 この結果、3人とも風を浴びた後では測定値が大きく減少した。実験前は8.5秒だった涙
の保持時間が、実験後はわずか1秒になった人もいた。

 また、3人にエアコンの下で30分間スマートフォンを操作してもらい、その前と後でBUT
を測定する実験も行った。すると、3人全員の涙の保持時間が半分以下まで減少した。有
田さんは次のように話す。

 「目の角膜を唯一守っているのが涙です。風で涙が蒸発してしまうと、角膜が外界と直
結して傷つきやすくなります。傷がつくと、乾き、かすみ、疲れ目などの不快症状につな
がります。さらにスマホを見つめていると、まばたきの回数が少なくなったり、完全にま
ぶたが閉じない不完全なまばたきになったりしますし、エアコンは湿度も下げます。風、
スマホ、(低い)湿度という目にとっての三重苦がそろった環境といえます。なかでも、
風を浴びることは目にとって最も過酷な状況になるのです」


涙液層破壊時間(BUT)を測定している様子=現代人の角膜ケア研究室提供
 ハンディー扇風機やエアコン、家庭用扇風機やうちわを使う時は、首元に向けたり、目
を閉じたりして目に直接風が当たらないようにすることが大切だという。

紫外線で高まるさまざまな病気リスク

 夏場は紫外線が強く、長時間浴び続けると、目にとってもさまざまな病気のリスクにな
る。電気性眼炎(※1)や翼状片(※2)、失明の原因にもなる白内障や加齢黄斑変性など
だ。

※1:強い太陽光を浴びたり、電気溶接したりした際に、長時間紫外線にさらされると角膜
を傷つけ、痛みや目の充血などの症状が出る。

※2:白目の表面にある結膜が黒目まで伸びてしまう病気。透明な黒目に入り込み、そこが
充血して赤く見える。進行すると乱視を引き起こしたり、視力が低下したりする。


風を受けた後の涙の状態=現代人の角膜ケア研究室提供
 紫外線を浴びた際、涙が最初のバリアーとなるが、涙が少ない状態では目の奥の方に紫
外線が入っていってしまい、これらの病気になりやすくなる。特にアウトドアを楽しむ時
は注意が必要だ。サングラスや、UVカットの日傘や帽子で紫外線から目を守ることがとて
も重要だという。

サングラスは色の薄いものを

 では、サングラスはどんなものを選ぶといいのか。有田さんは「一般的に色の濃いもの
がいいと思われがちですが、それは大きな間違い」と指摘する。

 「色の濃いサングラスをかけると暗いところに行った時のような見え方になります。人
間の目は、暗いところに行くと瞳孔が広がります。すると紫外線が入る面積が広がってし
まい、白内障や加齢黄斑変性など、目の奥の病気を引き起こすリスクがより高まってしま
うのです。色が薄い方がまぶしさを感じる分、瞳孔がきゅっと小さくなるので、目の奥ま
では届きにくくなります。UVカット率が高いものを選ぶことも大切です。また、茶系はま
ぶしさをより軽減する効果があるので、薄い茶色系のサングラスがお勧めです」

 さらに、夏は汗が目に入ることで、塩分を多く含む汗が浸透圧の関係で涙の水分を奪っ
てしまう。また、冷房で体が冷えることで全身の血流が悪くなり、涙の蒸発を防ぐ脂分が
分泌されにくくなる。こまめに汗を拭き、目に入らないようにすることや、体の冷えすぎ
を防ぎ、入浴で体を温めることも角膜を守る対策になるという。


 
普段から心がけたい三つのケア

 普段から目をいたわることも大切だ。有田さんは以下の三つのことを勧める。

(1)適度に目を休める

 スマホやパソコンなどの作業をしたら、できれば1時間に1回程度、休憩する。目を閉じ
たり、ピントを合わせずぼんやりと遠くを見たりすることで、目がリラックスできる。

(2)蒸しタオルを目に当てる

 温めるとリラックスでき、副交感神経が優位になって涙腺から涙の水分が出てくる。ま
た、涙の蒸発を防ぐため、まぶたの裏側にあるマイボーム腺から分泌される脂分は、温め
ることで分泌しやすくなる。マイボーム腺の脂は通常32〜34度くらいで溶けるため、蒸し
タオルは熱々の状態でなくてもよい。

(3)目薬をさす

 市販の目薬も有効。目薬はさしすぎると涙を流してしまうので、1回につき1滴だけ、1
日3〜5回程度を目安に使う。角膜の修復を助けるビタミンA入りの目薬がお薦め。

 有田さんは「充血、目やに、痛み、乾き、目の疲れ、まぶたの腫れなどの症状があり、
市販の目薬をさして1週間くらいたっても良くならない場合は、眼科を受診していただい
た方がいい」と話す。

mainichi.jp



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