夢を見た。
まだ、天界に居る時に、楽しかった頃の。
君は…。
何時も『朱鵺』と、呼ぶ。
その、姿が、亡き母親に似ていた。
ー…瞳を、閉じれば。
浮かんでくる。
幼き頃の自分の姿。
『何故、ソナタが、朱雀帝の後を継ぐのか』
憎き声で、父は、言った。
本来なら…。
異母兄が、継ぐ筈の朱雀帝。
彼は、純血。
だが…。
俺は、違う。
ー…父が。
母親に、惚れて出来た子。
所謂、妾の子。
『大丈夫よ、朱鵺。父君は、あんな感じだけど、ちゃんと、貴方の事を思っているわ』
だから…。
“泣かないで”。というのが、母親の口癖だった。
本当に“朱雀帝 朱陵王”は…。
俺の事を思っている父親だっただろうか。
冷酷な部分を持っている男じゃなかっただろうか。
そんな事を、考えながら、君の笑顔を思い出す。
『かなり、傷が、深い様ですね』
『流石の神でも、治す事は、無理か。治癒は、朱雀の担当ではないが、癒しの炎があれば…いけるかも知れない…』
『でしたら、玲樺お嬢様に』
『いや、あの子は…。私から、彼女に、お願いするよ…』
うっすらと、聞こえてくる会話。
傷?
あ、そういや、天界から、逃げる時に、傷を負っていたな。
俺…。