【水、動物】
2022/12/30 23:56
コメント0

海鼠

○世の中の意気がりを背に海鼠かな
○忘れたる恋に冷たき海鼠哉
○あざむきて海の王子の海鼠かな

寒蜆

○白砂に物脱ぎ捨てて寒蜆

海胆

○電磁波のムラサキウニや月に立つ



○酔ふほどに蛸や口より漏れでたる

牡蛎

○生牡蛎や肌のこぼれて服装師
○生牡蛎の胸元しろし四十路かな
○生牡蛎や襞のドレスに彼ふれる

寒鮃

○外海のここは最果て寒鮃



○本枯のひと削りして鰹船

秋刀魚

○口元の苦み処女のさんまかな
○細い秋刀魚ばかりの君逢ひし道



○御普請の新吉原も鰆かな

ずわい蟹

○山陰の化粧鏡やずわい蟹
○コロツケの脚つらぬいてずわい蟹



○亡き母や妻うつくしく蝦夷鮑



○黒鮪ミイラのごとく泳ぎけり
○おまかせを素朴なけしき鮪かな
○海流を具現化したる鮪哉

桜鯛

○端正の面はやして桜鯛
○桜鯛すてて帰るや許嫁

初鰹

○舌上にひと削りして初鰹



○松の重めくる暖簾のうなぎ哉
○料理屋の娘年ごろ鰻食ふ



○聖獣の勇魚なげだす天の森
○なげだした勇魚せいなる天のつの
○奥州に鯨跳ねたる平泉

海豚

○人数の限られてをる海豚かな
○尻の岡われ出港の海豚かな

ずわい蟹

○北陸の湯に癒されてずわい蟹
○湯あかりに甲乙つけづずわい蟹

桜鯛

○まな板に進路おふなり桜鯛

河豚

○愛嬌のふくと好みの末期かな

栄螺

○不登校生徒のごとく栄螺寝る

若布

○新若布男女や顔の照れかくし

海苔

○焼海苔の変換ただし光かな

海鞘

○塊りて介護保険のごとき海鞘

昆布

○万葉の黒髪の女や昆布狩
○鍵をして恋のうまみや昆布長し
○献上の昆布なによりも好ましき

秋刀魚

○宮古よりとどく秋刀魚や恋の歌
○大量の秋刀魚のあぶら綾里崎

螢烏賊

○まついかや流れて網を青白き

白子

○天上の風に吹かるる白子かな

初鰹

○胃袋に白浪たつや初松魚

鹿尾菜

○定食ののれんの浜やひじき狩

若布

○櫂こぎるゆらで小舟の若布かな
○青春の櫂うつくしくわかめ飯
○もの作る日本の朝やめかぶ汁
○叩きたる和布蕪の朝や工場群

保立貝

○やぼなこと聞かづ先ずくえほたて飯
○陸上の選手のごとき保立貝
○具合よき荒波くぐる保立貝

栄螺

○ほのぼのと肝の太さやさざえ飯
○戦争のごとく栄螺や膝を打つ
○戦せりごとく栄螺や膝を打つ



○蛤や一手一手の犬吠埼

桜蝦

○平和なり富士の噴火や桜蝦




○暁の鮪あかりやもたれ見る

白魚

○白魚や白神の水あつめけり
○白魚のすくふながれや白神山
○白神の主すり抜けり白魚漁

白魚

○白魚を女上手のゆうべかな

海蘊

○海人のうでのもずくやながれけり

飯蛸

○飯蛸に恋の仕掛けもなかりけり

鮟鱇

○鮟鱇に結納の儀を伝えけり
○政治家のごとく鮟鱇吊し切り



○はたはたや上目づかいに神の山
○はたはたや漕ぎ手も恋の鍋あらひ



○鄙びたる宿の自慢や鱈の汁
○大関のあらぶる海や鱈料理



○立山のなみだの如く鰤や氷見
○鰤網の声に横綱足むける



○真鰯や姿をかえてさつま揚



○銀色の面おどろきぬ鮭しぶき



○蛸むいて海ホルモンの噛むや月

海鞘

○海鞘の身の風塊や海の殻
○オレンジの乳房かくして真海鞘かな
○複雑な数式をしる海鞘の殻

岩牡蠣

○岩牡蠣や金づち叩く顕微鏡

田螺

○世捨てたる田螺に月の明かりかな



○むらさきのあかつきの鮎水まろし

落鮎

○落鮎や火ごとに群れて夜の闇



○流れゆくバナナの皮や鮎の留守
○萬葉のかほる姿や囮鮎



○集落のまな板上るさくら鱒



○那珂川や鮎邪魔せずに立ちこめる



○北限の猿やかがやく鮪崎
○氷水の鮪のこして恐山



○越中の国府飽かずや寒の鰤

栄螺

○南蛮の兜のごとき栄螺かな

桜鯛

○湯の浴びて一際の瀬や桜鯛

穴子

○真穴子やころものごときめしの上

赤貝

○赤貝や海の果実のうら若き

馬鹿貝

○馬鹿貝や愛嬌もあり舌をだす
○馬鹿貝や上総の波の渚ゆく

牡蠣

○むき牡蠣の腹にいそしむ手持感



○銀の背の岡にのぼれば伊豆の海



○全国の鮪よせたり恐山

太刀魚

○太刀魚や素朴な君を愛しけり

花烏賊

○花烏賊や夢にまことを差す赤酢



○あはれやな蟹のグローブ締まりけり

蝦蛄

○上品な采配に義や蝦蛄捧ぐ

河豚

○虎河豚の神やならまし豊後富士



○メドウサの美しきころ鱈白子



○ドローンの画素白長須鯨かな
○小鯨の都市あたらしき暮しかな

寒鯉

○寒鯉をすすめる佐久の男かな
○寒鯉や米沢の女性すすめ来る

寒鮒



○鍋底の蟹つきだして十勝川



○仇物の肝をひやすや鰻めし
○特上の芝居ひらくや鰻めし

落鮎

○落鮎や温故知新の水の中



○ふんわりと雲かはらずの鰻かな



○何事や鮭に味なし一大事

穴子

○唐物の朱やぬけだして穴子丼

秋鯖

○秋鯖や近江番所の目にとまる
○秋鯖や京の遠ても十八里
○秋鯖や足の速くて十八里
○秋鯖や京の包みの木版画


*新しい 古い#


TOPに戻る

-エムブロ-